女性の排尿の悩み
女性の排尿の悩み
女性の場合男性よりも尿道が短いため急性膀胱炎を起こしやすく、膀胱や子宮を支える骨盤底筋も緩みやすいため、加齢や出産により腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、過活動膀胱が出現することがあります。排泄の悩みは他人に相談しにくく、泌尿器科に行くことに躊躇する方もいらっしゃいます。誰もが毎日排泄をし、その排泄が気持ちよくできることはとても大切なことです。
また、どんな方でも加齢とともに排尿に関する悩みがでてきますので、年のせいと思ったり、恥ずかしがったりせずにお気軽にご相談ください。
当院では女性の性病検査は行っておりません。大変申し訳ございませんが婦人科の受診をお願いします。
こんな症状はありませんか?
女性に多く、頻尿、血尿、排尿時の痛みを特徴的とする疾患です。
多くは排尿の最後のほうや排尿後にしみるような不快な痛みを感じます。悪化してくると残尿感がひどく、何度もトイレに行くようになり、放置悪化すると、排尿時の焼け付くような痛み、血尿が現れることもあります。膀胱炎は何らかの原因で尿道から細菌が膀胱へ侵入することによって起こります。原因菌は大腸菌がおおいですが、通常は抗生剤治療で数日以内に完治することがほとんどです。
膀胱炎は放っておくと腎盂腎炎(じんうじんえん)を併発してしまうこともありますので、膀胱炎の疑いのある症状が出た場合、最近では耐性菌(抗生剤が効きずらい細菌)の出現もみとめることから早めの受診をお勧めします。
腎臓に起こる細菌感染症の一つです。
腎臓内にある尿のたまる部位を腎盂(じんう)といいますが、そこに膀胱から大腸菌などの細菌が逆流することで感染を起こします。急な発熱、悪寒、吐き気、脇腹や腰の痛みなどの症状が出ます。抗菌薬で治療し、3〜5日ほどで熱は下がりますが、治療が遅れると入院が必要になる場合もあるため早期の治療が大切です。 女性は、尿道長が短く、膣に細菌が定着しやすいことから、大腸菌などの細菌が尿道口から侵入しやすいため、男性に比べ尿路感染症が起こりやすいとされています。生理で衛生管理が一時的に難しいことや妊娠期に尿の流れが悪くなる(子宮が大きくなることで尿管を圧迫する)ことも要因として考えられています。 予防はお風呂やシャワーなどで陰部を常に清潔に保つことが大切です。排便後にも陰部の洗浄を行うと効果的です。細菌が尿道に入り込んだ場合、腎臓まで上ってこないようにすることも大切です。対策として、水分を適切にとり膀胱に尿をためないようにしましょう。
加齢とともに排尿回数が近くなると思いますが、症状がさらにすすんでくると尿意切迫感を伴うようになります。
尿の回数が多く(平均は昼間6-8回 夜間1回)、急に排尿をしたくなって我慢ができないことが多いです。 大勢の患者さんが潜在していることが分かってきました。 60歳以上女性の5人に1人、80代では3人に1人は症状があるとされ、約810万人が有病していると推測されています。 帰宅時玄関先で、台所での水仕事で、仕事中に尿意が強くなり我慢しづらいなどの症状が出現します。脳や脊髄の疾患、膀胱炎、加齢、精神的なストレスなど原因は様々ですが、原因がはっきりしないケースも少なくありません。診療では、他の疾患の可能性も含めて、問診や検査(腹部エコー検査、血液検査、尿検査、尿流測定など)を行います。飲水量や運動などの生活習慣の見直しで頻尿が改善することも多い疾患ですので、投薬だけに頼らず生活習慣の見直しや指導も行っていきます。
尿失禁は、40歳以上で4割の方が経験しているといわれており、トラブルを抱えて悩んでいる女性も少なくありません。尿失禁は自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう症状で、「切迫性尿失禁」「腹圧性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」に分類されています。
切迫性尿失禁は、急に襲われる切迫感のある尿意があり、我慢できずに漏れてしまうという症状です。排尿コントロールがうまくいかず、トイレに駆け込む事態が生じ、外出や乗り物の移動中に困ることがあります。腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の中で最も多く、咳やくしゃみ、笑ったときや重い荷物を持ったときなど、お腹に圧力がかかったときに尿が漏れてしまう症状です。骨盤底の筋肉の緩みが原因で、妊娠や出産、加齢などを契機に発症します。このほか、尿を排出したいのに出せず、少しずつ漏れてしまう溢流性尿失禁や、認知症や運動機能の低下が原因で起こる機能性尿失禁があります。
軽い「腹圧性尿失禁」の場合は、骨盤底筋訓練で尿道のまわりにある外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで、改善が期待できます。また、肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあります。骨盤底筋訓練などの保存的療法では改善しない場合、または不満足な場合は手術の適応となります。ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通してぐらつく尿道を支える「TVT手術」または「TOT手術」は、体への負担が少なく、長期成績も優れています。
「切迫性尿失禁」の治療には、抗コリン薬やβ3受容体作動薬などの薬物療法が有効です。飲水コントロール、骨盤底筋訓練、尿意があっても少しがまんする膀胱訓練などの行動療法を併用します。尿失禁は生命に直接影響するわけではありませんが、いわゆる生活の質を低下させてしまう疾患です。困ったなと思ったら恥ずかしがったり、年齢的なこととあきらめたりせずに、どうぞ泌尿器科専門医にご相談ください。
夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。加齢とともにその頻度は高くなります。夜間排尿の回数が一晩に2回以上ある高齢者は、1回以下の高齢者に比べて、死亡率が1.98倍になるという報告や、「夜間頻尿と死亡率の関係」に関する複数の研究結果を統合したところ、夜間排尿の回数が一晩に2回以上あると死亡率が29%増加し、3回以上になると46%増加するという報告もあります。
夜間頻尿の原因は、大きく分けて①多尿・夜間の尿量増加、②膀胱容量の減少、③睡眠障害の3つに大きく分けられます。
尿量が多いため夜間頻尿が引き起こされるタイプです。ときに心不全、腎不全など内科疾患が原因になっていることもあり、その場合はその疾患に対する治療によって頻尿が改善することもあります。
1日24時間の尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるものです。
熱中症など対策のため飲水量を増加している患者さんなどがあてはまります。1日の尿量が40ml/kg(体重)を超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。飲水量の制限のみで改善する場合も多いです。午前中に多く飲水し夕食以降は控えるようにしましょう。
夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるタイプです。一つの目安として、65歳以上の方では、24時間の一日尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は、夜間多尿タイプと考えられます。若年者は20%以上を超える場合は夜間多尿タイプと定義されます。
寝る前の水分の過剰摂取、抗利尿ホルモンの減少、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の疾患、下肢の筋力低下、下肢のむくみなど様々な原因が考えられております。下肢の運動や弾性ストッキングの使用により改善することも多いです。改善が認められない場合は夜間の尿量を抑えるホルモンの薬(デスモプレシン)を処方し症状の改善を図ります。
膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じて、膀胱が勝手に収縮し、頻尿、失禁してしまう状態で、トイレに急いで駆け込む症状(尿意切迫感)をみとめます。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄(せきずい)の疾患が原因になることもあります。治療は過活動膀胱症状をみとめる場合では、抗コリン薬、β3作動薬を投与します。
間質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。
眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くタイプです。高齢になるにつれて睡眠が浅くなることが多いため、夜間少しの尿意で起きてしまうタイプです。日中に寝てしまうと夜間寝られなくなるため昼寝は30-60分にとどめるようにしましょう。生活指導を行っても改善しない場合は漢方薬や睡眠薬を使用し深い睡眠を促します。
加齢や出産、腹部の手術などにより骨盤底筋群のゆるみや損傷することによって、子宮、膀胱、直腸など骨盤内に収まっている臓器の位置が下がり、膣から体外へ脱出してしまう状態です。脱出する臓器・部位によって、「子宮脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」と呼び名がかわります。有病率は平均して女性の10人に1人、閉経後の女性では約3-4割といわれています。恥ずかしさもあって医師に相談できず、お仕事や家事など日常生活に支障をきたしている方も少なくありません。
軽度の場合は自覚症状がなく、進行すると股に何かがあるような違和感や、入浴時に小さなふくらみが触れて気付くなどがあります。脱の進行によっては、尿漏れ、脱を押し込まないと排尿しにくいといった症状が起こることもあります。軽度の場合には、骨盤底筋群のトレーニングによる治療で改善が見込めます。中等症や重症の場合には、骨盤底筋群の補強をするための手術が必要になります。
腹圧性尿失禁に有効な筋肉トレーニングです。腹筋に力を入れずに腟や肛門を締めるトレーニングで骨盤底筋群を鍛えて強化できるため、骨盤臓器脱にも有効です。
シリコン素材のリングを腟内に挿入し、臓器の下垂を防ぎます。手軽な治療法ですが、長期間同じリングを入れておくと腟粘膜が炎症を起こし、おりもの、出血、不快感などを起こします。定期的な交換が必要となります。違和感や痛みを感じる方もいてその場合は他の治療に切り替えます。
保存的療法では十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。当院では保存的療法を行っており、手術が必要な場合には、高度医療機関をご紹介しています。