よくある排尿のお悩み
よくある排尿のお悩み
夜間頻尿や尿漏れ、尿の勢いが弱いなど排尿に関わる悩みは相談しづらく、病院にかかろうとしても二の足を踏んでしまうこともあります。
しかし、これらのお悩みは加齢とともに多くの方が経験するものであり、恥ずかしいことではありません。
一人で悩まずに些細なことでもお気軽にご相談ください。
まずは出来るだけ侵襲のすくない検査から行います。薬物療法のみならず、生活指導、行動療法で出来る限り症状の改善を目指します。
排尿の問題は①尿を出すことに問題がある症状②尿をためることに問題がある症状③排尿後の症状に分けられます。排尿時の症状は、たとえば「尿が出にくい」、「尿の勢いが弱い」、「お腹に力をいれて尿をだしている」などです。
尿を溜めることに問題がある症状は、「尿が近い」、「夜間排尿でこまる」、「尿が我慢できずもれる」などです。また、排尿後症状とは、「残尿感や尿の切れが悪い」といったものです。多くの方が、加齢とともに様々な排尿のトラブルを抱えますが、通常はこれらの症状が複合してあらわれます。
「尿が出にくい、尿の勢いが弱い」などの排尿症状は、尿の通過障害、あるいは膀胱収縮障害によって起こります。通過障害で最も頻度の高いものは前立腺肥大症で、膀胱収縮障害は男女とも神経因性膀胱で起こります。膀胱収縮障害の原因は、加齢による膀胱の老化現象や脳梗塞、脳出血、パーキンソン病などの神経変性疾患、糖尿病の神経障害の一部などがあります。
前立腺は男性にしかない臓器で、精液の一部を産生しています。前立腺の肥大がすすむと尿道を圧迫して、尿の通過障害をきたし、さまざまな排尿症状を引き起こします。前立腺肥大症は加齢とともに有病率が増加し、70歳以上になるとおよそ70%の男性では、程度の差はありますが前立腺が肥大しているとされています。 その中で生活の質の悪化を感じ治療を必要とする人は1/4くらいと推定されています。
膀胱の収縮障害の原因に神経因性膀胱があります。排尿をつかさどる神経が障害を受けるために、膀胱の機能が低下します。障害を引き起こす原因疾患としては、糖尿病による末梢神経障害、腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、子宮がん・直腸がん手術などにおける膀胱への神経の損傷、進行した前立腺肥大症などがあります。そのため排尿症状を中心として様々な症状を引き起こします。
排尿症状は、様々な原因があるため生活に支障があるような場合には、泌尿器科専門医を受診し、生活習慣の指導と薬物治療を行います。また、男性の場合、前立腺がんの罹患率が全てのがんの1位になりました。排尿困難のある場合には、前立腺がんが隠れていることもありますので、泌尿器科でPSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)の検査を受けることをお勧めします。
残尿感とは、排尿後も、「尿が出きっていない感じ」、「尿が残っている感じ」があるという症状です。実際に尿が残っていることもありますし、尿が残っていないのに残尿感を感じることもあります。超音波で実際に残っているか検査します。
残尿がふえる代表的な疾患は、男性における前立腺肥大症があります。前立腺肥大が進行すると尿道の通過障害が発生し、排尿時に膀胱がうまく収縮できず、十分な尿を排出できず、排尿後に残尿が発生します。年齢にもよりますが残尿が50-100cc以下であれば正常範囲と考えられています。 超音波で残尿がないのに残尿感を感じる場合は、膀胱や尿道の知覚異常が原因となります。知覚異常による代表的な疾患は膀胱炎などの尿路感染症があります。膀胱炎は排尿時痛、頻尿などの症状とともに残尿感をともなうことがあります。適切な抗生物質服用によって数日以内に症状が改善します。
「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。朝起きてから就寝までの昼間の排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。
頻尿の原因には以下の疾患があります。
膀胱に尿が溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮し、急な尿意を感じ、トイレに駆け込んでしまいます。過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の多い疾患です。原因は老化現象によるもの、脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の疾患、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になることにより起こると考えられております。症状がさらに進行するとトイレに間に合わずにもれてしまうようになります(切迫性尿失禁)。
残尿とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態をいいます。前立腺肥大症などによる排尿障害が進行すると残尿が発生します。また、糖尿病、椎間板ヘルニア、子宮がん、直腸がんの手術などで、膀胱を収縮させる神経が障害されると、膀胱がうまく収縮できなくなって排尿障害を引き起こし残尿が発生します。膀胱内に残尿があると、尿を溜めるスペースが減少するために、1回の排尿量は少なく、回数でカバーするため頻尿になります。
1日の排尿量が著しく増えた状態をいいます。膀胱機能に問題がなくても、糖尿病などの内分泌疾患、水分の多量摂取、薬剤(利尿剤)による尿量の増加が頻尿の原因となります。1回の排尿量は(200cc以上)であるにも関わらず、頻尿になります。一日尿量を測定し、体重当たり40cc/Kg以上の場合は多尿と診断されます。
膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。
膀胱がんの重要な症状は血尿ですが、まれにがんによる膀胱刺激症状として頻尿を認めることがあります。
心因性の頻尿は、膀胱にあきらかな疾患をみとめないが、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態です。心因性なので、夜寝てしまえば排尿のことを気にすることはないので、通常夜間の頻尿はないことが多いです。
上記のように頻尿には様々な原因があるため、その原因に応じた適切な治療や対処をする必要があります。
頻尿でお悩みなら泌尿器科専門医を受診することをお勧めします。
夜間、排尿のために1回以上起きる症状を夜間頻尿といいます。加齢とともにその頻度は高くなります。夜間排尿の回数が一晩に2回以上ある高齢者は、1回以下の高齢者に比べて、死亡率が1.98倍になるという報告もあります。
夜間頻尿の原因は、大きく分けて1)多尿・夜間多尿、2)膀胱容量の減少、3)睡眠障害に分けられます。
尿量が多いために夜間頻尿になるタイプです。心不全、腎不全など内科疾患が原因になっていることもあり、その疾患に対する治療によって頻尿が改善することもあります。
1日尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるタイプです。熱中症、脳梗塞予防のため飲水量を増加している患者さんなどがあてはまります。1日の尿量が40ml/kgを超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。飲水量の制限のみで改善する場合も多いです。午前中を多く飲水し夕食以降は控えるようにしましょう。
夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるタイプです。目安として、65歳以上では、夜間尿量の割合が1日尿量の33%を超える場合は、夜間多尿タイプと考えられます。若年者は20%以上を超えるものと定義されます。
寝る前の水分の過剰摂取、抗利尿ホルモンの減少、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の疾患、下肢の筋力低下、下肢のむくみなど様々なの原因が考えられております。下肢の運動や弾性ストッキングの使用により改善することも多いです。改善が認められない場合は夜間の尿量を抑えるホルモンの薬(抗利尿ホルモン剤)を服用し症状の改善を図ります。
膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じて、膀胱が勝手に収縮し、頻尿、失禁してしまう状態です。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の神経疾患が原因になることもあります。治療は過活動膀胱症状をみとめる場合では、抗コリン薬、β3作動薬を投与します。
男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで排尿がしにくくなり、結果として膀胱に負荷がかかり膀胱が過敏になることがあります。前立腺肥大症を認める場合は、α1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬を症状に合わせて併用服用します。
間質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。
眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くタイプです。高齢になるにつれて睡眠が浅くなることが多いため、夜間少しの尿意で起きてしまうタイプです。昼寝が長いと夜間寝られなくなるため昼寝は30-60分にとどめるようにしましょう。生活指導を行っても改善しない場合は漢方薬や睡眠薬を服用し深い睡眠を促します。
糖尿病、高血圧、心疾患、腎機能障害などの疾患が原因となっている夜間多尿の場合は、基礎疾患の治療が重要です。熱中症、脳梗塞や心筋梗塞の予防のため寝前や夜間にたくさんの水分をとる方がいますが、科学的根拠はなく、水分の摂りすぎで頻尿になっている場合は、むしろ水分を控えることが必要です。
過活動膀胱では、抗コリン薬、β3作動薬を、前立腺肥大症では、α1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬を症状に合わせて服用します。間質性膀胱炎や骨盤臓器脱は、手術を含めたもともとの疾患の治療が必要となります。
睡眠障害による夜間頻尿には、睡眠薬の服用も有効ですが、よく眠れるような環境の整備や生活リズムの改善も重要です。
5歳を過ぎても週に2-3回以上の頻度で、3ヶ月以上連続して夜間睡眠中の尿失禁を認めるものを夜尿症と言います。7歳児の夜尿症のお子さんは10%程度とされ、その後年間約15%ずつ自然治癒していきますが、成人でも0.5%は症状が残存するといわれています。
夜尿症は、夜間睡眠中の覚醒障害を基盤として、抗利尿ホルモン(尿量を少なくするホルモン)の夜間分泌不足による尿量増加や尿を膀胱に溜めておく機能の未熟性によることが考えられています。
まずは生活指導として3つの基本方針、すなわち、①中途覚醒を強制しないこと、②夕方以降からの飲水を控えること、③膀胱容量を増やすための排尿我慢訓練を行います。効果が乏しい場合には抗利尿ホルモン剤投薬または夜尿アラーム療法を追加します。
小学校に入っても夜尿症が治らない場合は、小児科あるいは泌尿器科を受診することをお勧めします。